煩悩を消し去るテクニック  SPECIAL EDITION

 

映画の中で主人公の妻役を演じた三原じゅん子さん。主演の嶋大輔さんとは昔からのお知り合いということもあり、順調に撮影は進んだようだ。ご自身のダイエット体験からロックンロール、こだわり、そして作品について、フランクに語っていただいた。

 

 

『ロックンロール★ダイエット!』江口巌役
嶋大輔さん

 

1964年神奈川県生まれ。81年、ドラマ「茜さんのお弁当」でデビュー。82年「男の勲章」が70万枚を超える大ヒットを記録、第15回日本レコードセールス大賞・男性新人賞を受賞。88年に「超獣戦隊ライブマン」に主演し、主題歌も担当。以降、俳優として映画、ドラマに出演。近年の出演映画は、『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(03)、『戦国自衛隊1948』(05)、『木更津キャッツアイワールドシリーズ』(06)など。また05年に「男の勲章」の続編として発表した「大人の勲章」はインディーズチャート初登場1位を記録した。

 

 

 

「奮起すれば何かが達成できる」
それがこの映画で伝えたいこと

 

 

──最初に『ロックンロール★ダイエット!』主演のオファーがあった時はどう思われましたか?

 

 それ必ず聞かれるんだけど、やっぱり太ってるのかなあ俺、って思いましたよ(笑)。

 


──実際にダイエットされた経験はありますか?

 

 ありますあります。テレビ番組の企画でも、プライベートでも。

 

 

──その時はどんな方法で?

 

 オーソドックスに食生活での節制と運動ですね。
食べなきゃ痩せるのは当たり前で、一生食べないでいられるならいいんだけど、人間生きてくためには食べなきゃならないじゃないですか。
だから、食べないダイエットはしません。動いて燃やさないと。結局、ちょっとは辛い思いをしなけりゃダメってことですよ。

 

 

──今回も、映画公開までに10キロ痩せると公約されたんですよね。


 ええ、もうとっくにクリアしてますよ(笑) 。
夜、仕事が終わってから家の周りを歩いたりしました。ダイエットが仕事となれば続くんですよ。
プライベートでは……、きついですよね。

 

 

──ワーキング・ダイエットですね。「ロックンロール」と「ダイエット」の関係はどういうふうに思われました?

 

 最初はわかんなかったですね。
ずっとツイストでも踊り続けて痩せるのかなと(笑)。

 


──やはり「太った身体はロックじゃない」と思いますか?


 太ってたらロックンローラーじゃないのかっていうと、そうとも限らないんだけど、結局、ステータスの問題だと思うんですよね。
見た目スラッとしてた方がカッコイイだろうし、10人のうち8人がそうだと言えば、それが正しいってなっちゃうノリがある。
ロックといえばドラッグやったりだとか、アウトローなのがロックだとか言われると、じゃあ真面目な奴はロックじゃないのか!って思うし。
その間でみんな揺れ動いてるんじゃないですかね。

 


──反抗がロックの姿勢だとすると、世の中がスリム志向になってる時には太ることが逆にロックなのかもしれない!?

 

 ファッション業界でも、今までガリガリのモデルさんたちしか使わなかったのに、今は体重が何キロ以下しかない痩せ過ぎな体型はダメで、ふくよかな方がいいという傾向になり始めている。
だから必ずしも痩せなきゃいけないってものでもないと思うんですよ。

 


──ただ、この映画のストーリーの中では痩せることがロックであると描かれているように見受けられますが。

 

 この映画に関してはダイエットすることが目的ではなく、「奮起する」ってことがテーマだと思うんですね。
昔の自分の輝かしかった時代を語っても子供たちはまったく信じない。
だけど、まぁ身内の言うことだからあまり気にせず過ごしているところへ、奈々という女の子が現れて「あんたらみたいなデブがロック語ってんじゃないわよ」と罵倒するわけですよ。
そこでガンさんがやっと奮起する。
だからダイエットの映画ではあるんですけど、奮起した姿を家族に見せていく、さらに言えば「思えば通じる」ということなんじゃないかと思うんです。

 

 


──見た目の問題ではないわけですよね。


 うん、精神ですよね。
人から言われてやるんじゃなくて、物事は自分自身が強く思ってはじめて成立するんだということを描いてるんじゃないかなと思うんですよ。
人間って「やんなきゃいけないなあ」と思っててもやらないじゃないですか。
「やろう」と思ってはじめて行動できる。
そう思うまでには自分の中で格闘があってね。
そのきっかけをどこで見つけるか。
この映画のガンさんにとっては子供と奈々の存在だったってことじゃないですかね。
娘のために何かを見せるというのが、ガンさんの場合はたまたまダイエットという形でしたけど、ただのさえない中年のオッサンでも、奮起すれば何かが達成できるんだってことを感じていただければと思います。

 


──今回、三原じゅん子さんにお話を伺ったら、嶋さんはとても大きな人だとおっしゃってました。


 身体がですか!?(笑)

 


──いえ、精神的に、人として。


 そうですか、そう言っていただけるとありがたいですけど。
先輩と夫婦役みたいなのをやらせてもらうのははじめてなんですよ。
同い年だけど、ずっと先輩と呼ばせていただいてるんです。
僕はまだ学生時代に『金八先生』を視聴者として見てましたから。

 


──現場での空気はいかがでしたか。


 僕が居酒屋で奈々と抱擁してるところを先輩(妻役の三原さん)に見つかるっていうシーンがあるんですけど、恐かったですねえ(笑)
普通の人はこうパッと見てスッと振り向いて帰るんですけど、本物の不良は見た後に一回こうやって前に出て(ガンを飛ばしてから)行くんですよ。
先輩は素でやってましたからねえ(笑)
でも、本当はとても心の優しい方なんですよ。

(interview:HIKARU KUROZUMI  photo:TAKESHI MORI)