山中さわお
●The pillows のボーカル&ギター。北海道出身。父親が教師で母親は看護婦という堅 い両親のもとに育ち、成績はオール5、委員長もこなす優等生。厳しい家庭でオヤツ やテレビも禁止という反面、本当に始めたいことは躊躇せずにやらせてくれる環境で、 小学生の頃からギターを習得。その後パンクに目覚め、得意のギターでロックの楽し さを体感。The pillows は今年でバンド結成15周年を迎える。

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山中さわお さん(ミュージシャン) 男は脳ミソで痩せろ!

 今回お話をお伺いさせていただいた山中さんは、たいへんスリムでカッコいい、まさにロック・ボーカリストというイメージ通りの方でした。そんな山中さんにも、かつてダイエットをしなければならないほど太った時期があるそうです。そこからどうやって今のスリムな体型にカムバックできたのか、ダイエットの秘訣を伺いました。

【自分が太るというイメージはなかった】

 山中さんが太り始めたのは22、23歳の頃。バンド活動のために北海道から上京したあとでした。

「ウソみたいな話だけどベルトの穴が4つ変わったんですよ。なのに『最近ベルトが おかしい。きっと革が伸びたんだろう』と思っていました。その当時は写真をみても 『カメラマンが悪いんだ』と思っていましたね(笑)。でも、体重計で計ったら10キ ロも太っていることが判明。そこで初めて「オレがおかしいんだ」とようやく気付い たんですよ」

 山中さんが、「自分は太ってない」と思いこんだのには理由がありました。

「実家の山中家はウルトラ質素な食卓で、『庭に生えてる草を食ってろ』みたいなと ころがあったんですよ(笑)。両親が健康食品マニアとまでいかないんですけど健康 グッズが好きで、一時期、玄米食になりましたし、飲み物は牛乳だけ。おやつも用意 されていることはなかったんです。だから、『太りようがない』。食べることを楽し いとも思えませんでしたね」

 その反動が出たのは、ひとり暮らしを始めてからでした。

「大人になってジャンクなものに走りました。子供時代のウラミで、コーラやカップメンを思う存分飲み食いしました。コンビニってなんてイイんだろうって(笑)。そのうち、お酒も飲めるようになって。お酒が好きになったら食事も好きになってきたんです。その頃、料理の上手な友達が居候してきて、そいつの作る料理がまたウマい。見かけは思いきりヤンキーだったんですけどね(笑)」


【ダイエットの敵は胃袋ではなくて脳ミソ】

 お酒と友情のおかげ(?)で、順調に太ってしまった山中さんですが、体重計に乗ったことをきっかけにダイエットを決意します。

「最初は『何も食べない』『下剤を飲む』『食べて吐く』など、やってはいけないことをガンガンやっていました。それで一時的に撮影の時などはなんとかなったんですけど、次第に同じことやっても痩せなくなってきた。それは運動して痩せていないので、筋肉は落ちても脂肪は減らない。ただ今より若かったから、根性でなんとかなると思っていました」

 しかし、そうした無理なダイエットは結局続かないもの。山中さんは、やはりダイエットには食事制限が一番効果的だ、ということに思い至ったそうです。

「『ダイエットの敵は胃袋ではなくて脳ミソ』なんです。今、ダイエットサプリのひとつに胃袋を満腹にする薬があるけど、それで効果のあがる人はなにもなくてもできる人。普通はお腹いっぱいでも脳が味を欲しがる。お腹いっぱいになればいいのなら水を飲んでればすむはずだけど。味が欲しいわけだから。だからお腹がすいたら、自分の好きなものの中でカロリーが低いものを探してみる。一食500キロカロリー以下で、これなら続けて食べられるというものを。ダイエットは、ちゃんとカロリー計算をして、長ーく続けてやらないとダメですね」

 山中さんは、今現在も、スパゲティを食べるならボンゴレよりミートソース、ラーメンより蕎麦というように、カロリーを気にしながら食事を続けているといいます。 さらに、運動も欠かせない日課。夜、腹筋とストレッチを音楽1曲分程度行ったあと、近所を25分くらい走っているそうです。


【バンドの存在がダイエット魂の源】

 「楽なダイエットはこの世にはない」という山中さん。食事制限中の食欲とどのように闘っているのでしょうか。返ってきた答えは意外にも、「食欲はガマンできない」との言葉でした。ただし、「10回食べたいと思ったら、そのうちの3回だけ食べて7回はガマンする、そして3回食べた分のペナルティとして余計に体を動かす」という方法が山中流だったのです。

「たまに雨降っていたら走らなくてすむから嬉しいなぁ、とか、ついでに腹筋やストレッチもサボっちゃえという怠け心も出てくる。ただ、ボクはピロウズに関わることでなら、苦労ができるんです。

 例えば、ビデオクリップやジャケットを撮影する時、ライブツアーがある時に体力が落ちてたり、太っていたらどうなのか。せっかくいい曲をつくったのにたかだか太ったということで、聴く人がひとりでも減ったら、伝えていくスピードが遅くなるじゃないですか。男のボクでさえカッコいい、カッコ悪いということは気になるから、異性であればなおさらチェック厳しいですよね。

 いい曲を書くというのは努力しても、頑張ってもなかなかできない。たまたま気分がノッてできた、そういう瞬間が一年に何回かあってようやくできる。自分の音楽は頑張ったらできるなんて簡単なものではなく、もちろん頑張るけど、イコールすぐ結果に結びつくものじゃない。走っていい曲ができるのなら絶対走るよ。

 ところが、ダイエットは結びつくんですよ、やったぶんだけ。ボクの音楽を伝える手段として、ダイエットして見栄えが多少でもマシになって聴いてくれる人が増えてくれるなら、ダイエットやりますよ! だからボクがボーカルじゃなかなったり、ピロウズじゃなかったら「そんなの関係あるかい」って、食って飲んでるんだろうね(笑)」 

 最後に山中さんは、ダイエットや太っていることで悩んでいる男性に次のようなメッセージを残してくれました。

「ダイエットの敵は胃袋じゃなくて脳ミソなんだ、ということを自覚してください。そしてふだん食べている料理のカロリーを知ること。カロリーをセーブして、ある程度運動していれば、たまに人とガンガン食べても平気なはずですよ。それとプチ目標を作るのもいいですね。今度合コンがあるからそれまでに痩せようとか、海に行くから体を引き締めようとかね。自分がやれる運動やローカロリーの料理を見つけて、それと一生つきあうくらいの気持ちで長く続ければ、自然と体重は減ってくると思いますよ」